設立と沿革

 当研究所は、1942年、野田醤油株式会社(現キッコーマン株式会社)からの基金を基に千葉県野田に設立され、同年文部省より財団法人として正式に認可されました。当研究所は、「産業の発達に資するため、主として発酵化学に関する研究を行い、もって科学、技術、および文化の発展に寄与する。」ことを目的としています。

 当研究所が設立された当時、醤油醸造過程には科学のメスはほとんど入っていませんでした。当研究所は、1946年、醤油醸造過程に関する基礎的な研究を開始し、醤油醸造にとって必要な微生物の種類とその役割を明らかにしてきました。その成果は、季節や場所を問わず、優良な醤油を高収率で安定して生産する技術開発の一翼を担いました。この技術は、1973年に建設されたキッコーマンのアメリカ工場や、全国各地に作られた醤油の協業工場で実際に生かされ,業界全体の醤油の品質向上に貢献しました。

 その後、研究の主体は、醤油醸造から微生物の生産する酵素へと移って行きました。この過程で、種々の新しい有用酵素が発見され、主に臨床検査用試薬として役立っています。このような酵素の研究と並行して、1976年より遺伝子組み換え技術の研究が開始され、酵素等を大量生産できる工業生産用宿主ベクター系(スリーパーベクター)を完成させました。この技術は工業的酵素生産に利用されています。近年は、新しいバイオテクノロジーの進歩を取り入れて、微生物ばかりでなく動植物細胞を対象にした研究も行ってきました。

 2000年に当研究所の事業の見直しを行い、研究領域を麹菌と耐塩性微生物に関する基盤的な研究に絞って研究事業を行うと同時に、発酵化学関連分野の研究助成事業を新たに開始しました。

 公益認定の登記を行い、2011年4月1日、公益財団法人となりました。